こんにちは、かんです。今日は、大手企業を退職して博士課程に進学して私が、どのように生活が変化したのかを紹介したいと思います。
簡単に私自身の紹介をいたしますと、MARCH大学院を修士で卒業後、大手自動車メーカーの開発職で2年間勤務しました。
その後、会社を退職して博士課程の学生として、修士まで所属していた研究室で研究を行っています。
その経験の中で私が感じたことを述べたいと思っています。
※これは個人の一定の経験に基づく見解・意見です。
そもそもなぜ企業を退職して博士進学したのか?
本題に入る前に、大手企業で働いていた自分がなぜ退職して学生という身分で博士課程に進学したのかを少し紹介します。
その理由はシンプルで、研究が好きだったからです。
学部4年生・修士の時にも研究活動を行っていましたが、結構楽しいなと思って取り組んでいたんですよね。
まだ世に出ていない新しいことを発見して、論文なり何かしらの形で世界中に発信するということが快感でした。
英語も割と好きだったので、国際学会に参加して海外の人とコミュニケーションをとるのも楽しかったです。
修士卒業後には日経大手の自動車メーカーに入社しました。
でも、研究とは少し違うかなーと思ってもやもやとしていました。
そんな中、研究って楽しかったなという想いが強くなり、思い切って博士課程に進学しました。
私自身、「民間企業が嫌になった!」とかの理由で退職したわけではありません。
長い人生の3年間、やってみたかったことに挑戦して、自分を試してみたいという気持ちが大きかったです。
あとは、もともと海外との仕事には興味を持っているので、世界共通で通用する証として博士号を取るのも自分の今後の人生にとってはプラスになるかもなと思ったのも博士進学の理由の一つです。
生活や考え方はどのように変わったか?
前置きが長くなりましたが、本題に入ります。
お金
一番みなさんここが気になるんじゃないかと思います。経済的にどのような変化があったかです。
会社員に比べて使えるお金は減る
企業を退職して博士課程に進学すると、圧倒的に使えるお金は減ります。
もちろん博士課程の学生を金銭的に支援する制度はいくつかありますが(後述)、会社員の給料と比較すると非常に心もとない額だというのが一般的な見解ではないでしょうか。
一般の会社では、月給20-25万円程度に加えて、年1or2回のボーナスも支給されますよね。それに加えて、残業代や住宅補助が出る場合もあります。
一方の博士の学生はというと。
こちらの記事で紹介されている例ですと「60万円以上の収入があるのが約25%」だそうです。
その他の75%はそれ以下、もしくはもらっていないというケースもあるようです。
また、学生ということで学費を払うケースが多く、給料をもらっていたとしても生活が苦しくなるケースがほとんどなのかなと思っています。
会社員と比較するのもよくないかもしれませんが、なかなか心もとない現状ですね。
私の場合、2年間企業で働いていた時には、給料は額面で25万以上、ボーナス支給で100万円以上の金額をもらっていました。これに加えて、残業代や住宅補助などもあったので、お金の心配は全くありませんでした。
現在の博士課程の収入では、大学でのRA関係で10万/月程度。JASSO奨学金(日本学生支援機構)で12万/月です。
JASSOの奨学金では、優れた業績を挙げることで返還の免除制度があるので、それを狙っているというところです。
収入的には博士課程に入学してガクッと下がりました(笑)
もちろん、「学生なんだから我慢しろ!」という意見もあるかもしれません。
ただ、これらの低待遇環境によって日本の博士課程学生が減少し、科学衰退国とも揶揄されているのは過言ではないと思います。
この問題ばかりは、博士学生やアカデミア全体での待遇改善がさらに加速していくことを願います。
退職翌年は税金が高い
税金、特に住民税や社会保険の料金は前年の収入額に対してかかります。
そのため、前年の稼ぎが多くなると当年の税金もたかるなるという仕組みになっています。
社会人を辞めて学生に戻ると、税金が結構重くのしかかってきます。
これ、想像以上にきついです、、、収入がガクンと減ったにも関わらず月に4,5万の税金徴収が来ます。
上手く節税する方法を知りたいものです。
博士の支援制度はいくつかある
一応、今の日本でも博士の学生に対する支援制度はいくつかあります。
1.学振(学術振興会 特別研究員)
日本での博士課程に対する生活費支援で一番よく知られている制度ではないでしょうか。
生活費20万と研究費が年間100万円程度もらえます。優れた研究テーマを提案して、申請者の20%程度が採択されるというものです。
取れれば研究者としての拍もつきますが、簡単に通せるものではないと思っています。
筆者もDC2に申請して、見事に残念な結果になりました!これは切り替えるしかないです。
2.大学でのRA(リサーチアシスタント)
大学が博士課程の学生をアルバイトとして雇う制度です。
業務負荷は各大学によると思いますが、そこまでのオーバーワークなく給料がもらえるので非常にありがたい制度です。
私の場合、この制度で月に10万円程度給料として頂いています。
3.日本学生支援機構 第1種奨学金 返還免除制度
全国の大学生で一番利用されているであろう奨学金制度「日本学生支援機構」です。
修士課程・博士課程では、奨学金を借りている過程中に優れた業績をあげて卒業すると、その後の返還が免除されるという制度があります。
最大借入額は修士・博士でそれぞれ8.8万、12.2万です。
返還免除の対象となった場合、借入金額の半額もしくは全額が免除となります。
研究を進める一つのモチベーションにもなりますね。
4.JST次世代、大学フェローシップ
学振と似ており、自分で申請書を書く系の支援制度で、最近できたものです。
私個人的には、副業が認められている点など学振と比較しても良い制度だと思っています。
5.研究室で研究員として雇ってもらう
裏技ですが、研究室で雇ってもらい、給料をもらうというパターンです。
ボスの予算次第なところもありますが、よく交渉して給料が発生すればラッキーというところですかね。
ただ、博士学生の実態に合った支給ができているか、全体に行き渡っているか、という点ではもう少し制度を拡大してほしいなと思ったりもしています。
博士課程に進学するということが頭にあるのであれば、やはりお金についてはよく考えておく必要があると思います
「世の中全てカネ」とは思っていません。
ただ、お金は生活する上では欠かせないものですし、一種の精神安定剤としての効果もあると思っています。お金の心配をしすぎて研究が進まなくなっても本末転倒ですしね。
どうしても博士学位を取得したい!でもお金が心配なのであれば、会社を辞めずとも学位取得する「社会人ドクター」という考えもあります。
仕事をしながら学位取得するための論文を書くというものです。
ちなみに、こちらの方は社会人ドクターを実際に体現している方です。ツイート自体も非常にためになるのでぜひフォローしてみてください!
時間の使い方
会社員と比べて時間の使い方に自由がきく
時間の使い方は本当に自由だと思います。
指導教授のやり方にも左右されるかもしれませんが、学位取得できるほどの業績を積みながら自己責任の範囲であれば、何をやっていても問題ないところが多いのではないでしょうか。
自分の場合、研究室にいるのは10時~21時が多いです。
また、朝起きてからもしくは夜帰宅してからの1時間程度を作業時間にするようにしています。
あと、忙しい時期や予定がない土日なんかは研究室で実験していたりします。
人によってはブラックだなと思うかもしれないですね(笑)
はい、自分でもたまに無理しているなーと思ったりしています。
でも、大きなストレスは多くないと思っています。
やりたくもない研究を無理やりやっているわけではないですし、「やってみたい!」と思っているテーマを自ら進めているので、早く形にして業績としたいという気持ちの方が強いです。
もちろん、結果が出ないときには辛いですけどね(笑)
また、家でできる作業の際には在宅で作業しています。
この辺の判断も個人の裁量にゆだねられているので、非常にフレキシブルに生活ができています。
研究・副業・起業 何をやるも自分次第
博士課程の学生は、学生という身分以外は縛られていない立場です。(学振を取ったら副業禁止になったりもしますが)
なので、やりたいことや興味あることを突き詰めていくのもありだと思います。
仕事(研究)
研究好きにとって博士課程は最高の環境
企業から博士に戻って研究をしていますが、やはり研究は楽しいです。
会社での仕事とは全く異なるなあと、しみじみ思っています。
今時の会社では、働き方改革や残業制限などで思ったように働けないという方もいるのではないでしょうか。
アカデミアの世界ではその辺の考えは自由です。
興味があることに対して、好きな時に好きなだけ研究をすることができます。
私自身、企業に入社する前はわからなかったのですが、やはり企業での仕事と大学での研究では、求められるものが全く別物である気がします。(個人的な意見になりますが)
企業の仕事では、組織が大きくなる分、人と人のやり取りが非常に多くなります。
どこか尖った特徴がある人よりも、幅広く人と付き合えるような丸い人材が求められているきがしました。自分のこだわりを持たずに、周囲に合わせてやっていける人が評価されるんだなあという印象です。
一方、研究では尖ったアイデアを持っていないと評価されません。
自分の興味や探求心に従って、どんどん自分を外にアピールできる人が強いと思います。
アカデミアで偉くなるには、数少ないポストを奪い合うという競争をする必要があるので、高みを目指すことが求められるという背景があるからですね。
会社での経験は必ず研究に活きる
私自身2年間、企業での経験を経ることで、研究(仕事)に対する取り組み方も変わりました。
企業での仕事のスピード感や、明確な目的意識を研究にも取り入れるようにしています。
アカデミアの世界では、どうしても時間に自由が利く分だらだらと作業してしまうことも多くなりがちです。
そういった部分でも、スピード感もって目標達成するためにメリハリつけて研究ができている気がします。
研究では、実験データの取得やプレゼン資料などで、こだわりだしたらキリがない要素も多いです。
そういったところも割り切って進めることができるようになりました。これは良くも悪くもですね(笑)
人間関係・世間体
身近な同期が少なくなる
同じ大学など、周りも見渡しても博士の学生って多くないです。
自分の場合は2年間企業で働いてから博士に進学しているという点でも、大学には年の近い人が少なくなってしまっているので、たまに寂しかったりはしますね。
世間体がいいとは限らない
わりと親戚からは「まだ学生なの?」と言われたりします(笑)
僕の友人でも博士課程を知らない人も一定数いて、自分が何をしている立場なのかを説明するのに一苦労だったりもします(笑)
このように、博士課程そもそもの存在が認知されていなかったりするので、周りの反応がいちいち気になってしまうという方はストレスになってしまうかもしれません。
こういった世間体は、重く受け止めすぎないのがベストかもしれないですね。
お金のこともそうですが、世間一般と異なる認識に対して、気にしすぎずにやっていける人がアカデミアに向いているんじゃないかと思います。
就活・進路
ここのポイントも皆さん気になるんじゃないでしょうか。博士課程の学生は卒業後にどんな進路を歩むのか。
世間的には、博士卒はキャリアにおいても不利になるということをよく耳にしますが、私個人的には全てのケースでそうであるとは思っていません。
もちろん、博士卒だと敬遠される企業もあるかもしれません。
でも、博士人材を求めてくれる企業だって多くあると思いますし、海外に目を向ければ、博士卒を高給で雇ってくれるところもあります。
むしろ博士を取得すると、選択肢は広がると思っています。
アカデミア研究、国の機関での研究、海外ポスドク、民間就職、起業
これらのうちのいくつかは、博士卒でないとつけない職業だってあるくらいですし、博士卒が重宝される場もあると思います。
逆に不安があるとすれば、どんな道に進むのが正解かが分からないということです。
これらのいろんな選択肢の中から、自分に合った進路を探すというのがなかなか難しいです。
迷った挙句に選択した進路に後悔したということのないように、早め早めに進路については考えたいと思います。
もちろん、アカデミアに残る1本で考えると茨の道ではあるかもしれません。
でも実際にはそうではなくて様々な選択肢が存在します。その中から自分にベストな選択肢をすると考えることができれば気が楽になるのではないでしょうか。
この就活パートについては、まだまだ自分の経験が少なく語れることが多くないので、今後別の記事としてよく更新していきたいと思います。
おわりに
ここまでで、大企業を退職して博士課程に進学してどのように生活が変わったかについて紹介しました。
記事本題でも述べましたが、博士の生活は自由です。自分の興味に従ってとことん追求できる時間を得られるはずです。
長い人生の3年間、自己投資するのも悪くはないのかなと思います。
ただ、やはり博士進学するというのは、ある程度の覚悟は必要になってくるのかなと思います。
日本での博士人材に対する環境はそこまで良くないので。そこは自分とよく相談してみる必要があるかもしれません。
価値観は人それぞれ。皆さんのキャリア選びのご参考となれば幸いです。
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