アカデミア研究と企業研究・開発の違い〜大手メーカー経験者が語る

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こんにちは、かんです。今日は、アカデミアでの研究と企業研究・開発での違いについて紹介したいと思います。

簡単に私自身の紹介をいたしますと、MARCH大学院を修士で卒業後、大手自動車メーカーの開発職で2年間勤務しました。その後、会社を退職して修士まで所属していた研究室で博士課程の学生として研究を行っています。

その経験の中で私が感じたこととして、主に大学でのアカデミア研究の良し悪し、企業での研究・開発職の良し悪しについて述べたいと思います。

※これは個人の一定の経験に基づく見解・意見です。

アカデミア研究と企業研究・開発職のメリット・デメリット

この記事の対象としては、修士課程で進路としてアカデミア・博士課程と民間企業か迷っている方、社会人でも博士進学を迷っている方になるかと思います。

アカデミア研究のメリット

まずはアカデミア研究と企業研究・開発それぞれについてメリットを紹介します。

自分の好きなテーマで研究できる

アカデミア研究の醍醐味といえばこれじゃないでしょうか。

やりたい研究と実際に行う作業が完全にマッチするということは少ないのかもしれないですが、基本的には自分で選んだ研究室で、自分のテーマとして研究を進めることができます。

会社だと、会社の都合やチーム内の兼ね合いにより思うような研究を進めることがやはり自分の思うように進めることが難しかったりします。企業を辞めてアカデミアで研究したいと言う人は、この部分に憧れをもっている方が多いのではと思います。

私自身も、会社から博士に戻ってきた身として自分が挑戦したかったテーマをダイレクトで行うことができているので、非常にありがたく楽しい環境だなと思っています。

時間に自由がきく

アカデミアは基本的に実力主義なので、成果を出していれば短い時間で活動していようが何も言われないです。

研究の大きな節目である学会発表や論文投稿さえこなしていて、研究室のボスや自分が困らない程度であれば、自分のペースで研究を進めることができます。

会社などで大きな集団になると、どうしても他人が絡んでくるので仕事のペースが不規則になりがちになります。また、大人数での会議では周囲に時間を合わせる必要が出てくるので、なかなか時間の自由が利きずらくなります。

一方で、アカデミアでアクティビティ高く活動してくためには、高い自己管理能力が求められている気もします。

たとえ成果が出なくても、結局困るのは本人なので他人は何も言わないことが多いです。その中で、自分の中でしっかり目標立ててコツコツ研究を進める能力は研究者では必須のスキルといえます。

個人の名前をアピールできる

研究でのメインの成果は、論文発表となります。そして筆頭著者として論文を出す時に自分の名前が一番初めに来るように、個人の名前が世界中に公表されます。

このことからもわかるように、研究の世界ではその個人の名前が世界中に知れ渡ることになります。

また、研究者としての能力を測る指標として、その研究分野において自分の名前がどれだけ売れているかということも一つの評価指標になります。どんな面白い研究をしているのか?どんなアイデアを持っているのか?どんな技術をもっているのか?自ら外にアピールしていく必要があります。

アピールの方法は千差万別であり、どんどん自分を前に出したい人にとっては楽しい環境じゃないでしょうか。

私も博士課程に入ってから、しっかり研究内容や業績をアピールしようと思い、個人の研究者ホームページを作成しました。こういうの凝ったりするのも研究の一つの楽しみですね。

企業研究・開発のメリット

給与、福利厚生などの待遇が良い

これは生活する上で一番大切ですよね。研究開発職が存在するような大きな企業は、どこも給料はそこそこいいのではないでしょうか。

また、残業に対する制度もしっかりしているので、基本的には生活するのには十分な額を給料として頂くことができると思います。その他、ボーナス、家賃補助なども考えると非常に手厚い待遇が得られると思います。

やはりお金をもらいながら研究ができると言うのは非常に魅力的です。

ちなみに私自身も2年間企業に所属していましたが、自分の場合は、残業代などを合わせると2年目時点で日本の平均年収を超えるくらいには給料を頂いていました。こんな新人に対してもしっかりと給料を払える大企業はすごいなと感心するばかりです。

大きなプロジェクトを経験できる

大企業での仕事の醍醐味といえばこれだと思います。大学や小さな会社では経験できないような仕事をすることができる。

世の中で販売される予定の製品情報を知ることができたり、新製品立ち上げや取引のために大きなお金を動かしたりと、貴重な経験を積むことができます。

私の場合も、入社2年目時点で他社とのやり取りに参加させてもらいながら、開発中の新車に搭載する新機能の開発に携わらせてもらっていました。非常に貴重な経験です。

社会的地位が高い

大きくて誰もが知っているような有名企業で働いていると、それだけでステータスになります。会社の看板を借りるということになりますが、自分が大した能力なくても、その会社に勤めているというだけでチヤホヤされるということですね。

友人や親戚の集まりでも、「〇〇で働いてるんだ!すごい〜」などと言ってもらえることが多くなります。

また、家を借りるときやローンを組む時にもなんの苦労なく済ませることができます。

ここで注意したいのは、その人自身が特別能力をもっていなくともチヤホヤされることが発生するという点ですね。ちやほやされすぎた結果、有頂天になって努力をしなくなるというのは一番避けたいパターンです。会社の看板に負けぬよう、成長欲はもちたいものですね。

アカデミア研究のデメリット

次に、アカデミア研究と企業研究・開発でのデメリットについて紹介します。

企業に比べて低待遇なことが多い

日本における博士やアカデミア人材が少なくなっている一つの原因と言われていますが、確かに民間の企業と比較して待遇は見劣りしてしまうかなと思います。

博士後期課程の学生に対する生活支援として有名なのが、学振(※1)です。この制度により、毎月20万程度の給料がもらえることになります。

ただ、この学振の通るのも一苦労ですし(申請書通過率20%以下)、もらえたとしても給料から税金などが差し引かれるため実質的な手取りはさらに少なくなってしまいます。また、ボーナスもないため企業と比較するとどうしても見劣りしてしまいますね。

このような状況を鑑みると、今の日本ではお金面では企業に行った方が割がいいです。博士課程での学歴や実労働時間などを考えると、割りに合っていないなという印象がぬぐえません。

ただ、最近ではこの博士課程の状況を改善しようと新たな援助制度が出てきてもいます。

JSTによる「次世代研究者挑戦的研究プログラム(※2)」や「大学フェローシップ創設事業(※3)」です。結構よい制度ですので、ぜひ調べてみてください。

※1:https://www.jsps.go.jp/j-pd/pd_gaiyo.html

※2:https://www.jst.go.jp/jisedai/

※3:https://www.mext.go.jp/a_menu/jinzai/fellowship/1419245_00002.htm

任期なしの職を得るのが簡単ではない

大学のアカデミアで目指すべきことは、大きい括りでいうと研究室主催者であるPIになることです。皆さんが想像しているところで言うところの教授、准教授クラスの人のことです。

まず、このポストに就くためには数多くの優秀な研究者との戦いに勝ち抜かなければなりません。これだけでも十分しんどいことではあります。

さらに昨今の少子化なども関連して、大学でのポストの数は減っていく一方です。そのため、ポストの奪い合いが激化しています。

任期なしのポジションを得るまでには、3年や5年の任期ありのポストを転々としていくのですが、この状況で研究を続けるというのも相当タフなものが求められると思います。

労働時間が異常に長い

研究の世界では、どうしても成果は時間に比例すると思います。時間をかければ上手く行くことが多いです。

研究者として食っていくには、成果をコンスタントに出していく必要があります。なので、自分の時間を犠牲にしても研究をしなければならない状況となり、どうしても長時間労働が主になります。

企業では働き方改革で残業時間の削減が推進されているので、仕事の量を適切にコントロールしてくれたりします。(実態はわかりませんが)

本人が好きなことしてるんだから文句はいうなという意見もあります。まあ確かに、私自身も1日12時間くらい研究していてもストレス感じないこともあるので、本人のやる気や気持ち次第かもしれないですね。

企業研究・開発のデメリット

上司や組織に合わせる必要がある

大きな組織で動く分、自分の思ったように物事が進まないことや理不尽も多くあるかと思います。

一人で物事を進めるわけではないので、何かのスペシャリストではなく、ゼネラリストになることを求められる気がします。

また、このやり方の方がいいということがあっても、古くから使われている方法を使わざるをえないケースなどもあり、どうしても組織のルールに沿って仕事を進めることがメインになります。

ただ、注意したいのは受動的な姿勢で仕事をしすぎて組織に埋もれてしまい、何もスキルが身につかなくなることです。

そうなってしまうと、いざ環境を変えたいと思って転職しようとも、アピールできる点がない状態になってしまいます。

また、上司や組織に合わせるという点でたまに見受けられるのが「上司のために仕事をしている人」です。もちろん上司が仕事しやすいように自信が動くことは大事ですが、過度にやりすぎると正しい行動ができずに、その上司の言いなりで仕事する人になってしまいます。

意図しない異動に巻き込まれる可能性がある

企業の組織とは、思っている以上に大きいです。いろんな部署があって、何をしているかわからないような部署だってあります。そういった部署に異動になる可能性も0ではないです。

入社した時には花形の研究・開発職であっても、全然異なる部署に異動となるケースもあります。または、自分の専門からは遠い分野での仕事に異動することもあります。

やはり会社も会社の事情があるので、全ての社員の希望を通すことは難しいですよね。

そう言った意味で、先ほどもお話ししたように、そもそも企業ではゼネラリストになれる人材が重宝されるのかなという気もしています。

まとめ

今回は、アカデミア研究と企業研究・開発職におけるメリットとデメリットを紹介しました。

今回挙げたのはあくまでも個人の感想によるところも大きいです。捉え方は人それぞれなので、反対意見などもあると思います。あくまで自分に合った環境で楽しく仕事できればいいと思っています。この記事はそのための参考となれば嬉しいです。

今の日本では、「大学で研究したい!」、「博士課程を修了したい」といったアカデミア志望の人が少なくなっています。これについて、企業から大学に戻ってきた身分での感想としては、無理もないのかなと思っています。やはり、日本のアカデミアの外の世界の方が待遇などで勝っているためです。この辺は、これからさらなる改善がされるのを期待するばかりです。

自分もよく企業を退職してアカデミアの世界に飛び込んだと思っているくらいです(笑)

決断するにあたっては相当悩みましたが、今は自分で決めたことだから精いっぱい頑張ろうという思いです。

皆さんも自身のキャリアについてよい選択ができればと思っています。

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